我輩はチビり牧師である。オムツはまだない。

我輩は酒場牧師である

我輩は酒場牧師である。前科はまだない。てなわけで、前科はまだないはずの我輩は、あろうことか、ここは地の果てアフリカはウガンダの田舎町で中国のスパイという信じ難い濡れ衣を着せられてしまったのである。

そうなるとコトはやけにテキパキと進み、あっという間に1台のピックアップトラックが用意されて二人のポリスマンによってこのスパイ容疑者は首都カンパラへ向けて護送されていくのである。

しかしウガンダの人々は本当にやさしい。我輩の護送係という栄光の任務を命ぜられたおまわりさん達も親切でやさしかった。そしてやはりアフリカである。彼らはイイカゲンでもあった。

警察署を出発すると間もなく車は停車した。見るとそこは市場である。我輩に「ちょっとここで待っててね」と言うと彼らはなんと我輩を車から降ろしてどこへともなく走り去っていった。

一瞬このまま逃げてしまおうかという思いが頭をよぎったが、小心者の我輩にそんな無茶苦茶なコトができるはずもない。

我輩はチキン牧師である。警察から逃げたコトはまだない。

ともあれ所在無く待つこと30分ほどで彼らは戻ってきた、「いやあ、待たせてごめんね」って、軽すぎないか、それ?。見るとピックアップトラックの荷台にはバナナが満載されている。「あ、こいつら田舎で安く仕入れたバナナをカンパラで高く売って一儲けする気だな!」。すぐわかる。見え見えである。

断っておくが我輩はスパイ容疑者でありそれも首都のカンパラまで護送されなければならないほどの重大犯である(濡れ衣だけどよ)。そんなヤツを一人置き去りにして小遣い稼ぎに行く。そんなイイカゲンなアフリカ人が我輩は大好きである。

というわけでスパイという濡れ衣を着せられカンパラまで護送されるという悪夢のような状況に置かれてしまった我輩であるが、この後このことがすべて神の御手のうちにあったことを思い知らされるのである。

しかもこの時我輩は牧師どころかクリスチャンでさえなく、それどころか宗教大嫌いな無神論者の好青年であるに過ぎなかったのである。

これは真面目に申し上げるが神というのはこういう逆境の時にしばしば働かれるのかもしれない。このコトはずっと後に我輩がキリストに出会ってクリスチャンになり、ついでに牧師にまでなってしまった時に思い至ったことである。

早い話がこうである。仮にもしも我輩があの田舎町でスパイ容疑で捕らえられず、またカンパラまで護送されていなかったとしたら、今我輩は生きてここにいなかったであろう。

だからこの逆境も、神など信じてもいない無神論者への、実は神の采配であったというわけなのである。

神のなさることはものすごい。つまり自分のことを大嫌いなヤツのためにこんなことまでしてくれるのである。パネエぞ、神。

ちっとも早くないが早い話がこうである。中国のスパイという重大犯(我輩のことね。濡れ衣だけど)を乗せ、ついでにバナナも載せた我らがピックアップトラックはこの後2kmごとに停車を命ぜられ、軍隊によるものすごく厳しい検問に会うのである。

バナナを積んではいるがこれはスパイを護送するというウガンダ警察による公務である。もちろんおまわりさん達は私服ではあるが身分証明書を持っているしピストルも持っている。

それでも兵隊さん達は銃を構えていつでも撃てる態勢である、ってか、撃ちたくてたまらない様子でさえある。。。

我輩は恐怖のあまり何度チビりそうになったことか。実際少しだけ、いやそんなコトはどうでもいい、後にして思えば我輩達はウガンダ深南部という戦場の真っ只中、最前線のあたりを通過中だったのである。

あたりは砲撃の音がひっきりなしに響き渡る状態である。兵隊さん達は緊張感でピリピリしていた。当然である。おまわりさんも、である、バナナは積んでいたが。

ああ、我輩は愚かであった。カバ見たさにこんなところへ来てしまったのである。カバなどどこにでもいるではないか。そんなことないか。でも北回りで行けばよかった。後悔先に立たずと言うではないか。

我輩は愚か牧師である。後悔が先に立ったことはまだない。

そんな愚かな当時無神論者の好青年をも神はお見捨てにならなかった。スパイ容疑という信じ難い濡れ衣を着せられ首都の街まで護送されるという最悪に見えた逆境がなければ、我輩はあの地でピリピリ感満載の兵隊さん達に撃たれて殺されていた、かもね。

そんなわけで、ウガンダ警察の総力をあげて挙行されたスパイ護送大作戦は相当ヤバかったが無事に終了して、首都のカンパラの街に我輩はかろうじて生きて到着したのであった、満載のバナナとともに。

しかし、しかしである、これまでのことはここから始まるあの恐ろしい出来事に比べれば、ただの序の口というか、屁みてえなものというか、幕開けに過ぎなかったとは御釈迦様でも御存じあるめえ。

その恐ろしさといったら、今思い返してもチビりそうである。実際少しだけ、いやそんなことはどうでもいい。

我輩はチビり牧師である。オムツはまだない。

中村 透(牧師バー店主/主任牧師@酒場で教会)


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