吾輩はシャバに戻った牧師である。でも安心したわけではない。

2020/05/13我輩は酒場牧師である

吾輩は酒場牧師である。前科はまだない。とは言うものの前回も書いたとおり、一日2回カンパラ・インターナショナルホテルに連れて行ってくれてうまいタダメシは食わせてくれるものの、当の秘密警察官から多分吾輩の状況を「う〜〜む、良くない、これは良くないぞ」と連発されている最中なのである。

ホテルに着くまでの道中、「う〜〜む、良くないぞ」と繰り返していた秘密警察ポリコマン(以下、㊙︎ポリ)はそのうち、「う〜〜む、なんとかしてあげたい!なんとかしてあげたいが。。。う〜〜む」と悩むこと頻りである。

「そんなに悩まないで、わたしなんかのために!」と言ってあげたい気持ちもあるが、それどころではない。これはいわゆる一つのチャンスであるかもしれない、そう思った吾輩も必死で考えた。「何かいい手はないものか。。。」

そのとき、丘の上のホテルの方から一台の車が坂道を降りてきた。何気なく見るとそれは我が日本の誇るト○タの車である。伏字にする必要などないが。周りを見ればほとんどの車が日本製ではないか!

ヒラメいた!

ヒラメいた!吾輩はヒラメキ牧師である。芸名はまだない。

いやしかし、今回のヒラメキは命に関わるかもしれない重要ヒラメキである。ちょうどホテルのある丘の上まで来たとき吾輩は親切な㊙︎ポリに言った。

「あのね、この国には日本の車がいっぱい走ってるじゃない?てことは日本の商社マンがいるってことだと思うんだよ」

㊙︎ポリ「ふむふむ、そうだろうね」

吾「それでさあ、日本の商社マンが泊まるとしたらこのホテルしかないんじゃないかな」

㊙︎ポリ「ふむふむ、そうだろうね」

吾「だからさあ、ちょっとホテルの受付の人に頼んで、宿泊中の日本人に助けを求める手紙を託してもいいかなあ?」

この瞬間、「うっ!」と短く叫ぶや、ミスター「ポ」の顔面が一瞬にして蒼白となった。「え?なんで?」と吾輩は思ったが「㊙︎ポリ」は苦しそうにうなり始めた。

「う、う、う〜〜〜〜〜〜〜〜〜む。。そ、それは、、、、う〜〜〜〜〜〜〜〜〜む。いや、それは。。。」

「いいじゃん?すぐ終わるよ」などと吾輩は気楽に言ってのけたが、後で考えれば彼は命がけだったのである。生か、死か、オオゲサでもなんでもなく、マジでそういう状況だったのである。

というのも彼は悪名高いウガンダ秘密警察の警察官であり(基本的にはみんな親切でやさしかったけどね)、この秘密警察を悪名高くしているのが他でもない、密告と裏切りだったのである。

他の秘密警察官から密告されて殺されていったポリコマンは数知れない(と、吾輩は後で知った)と言われている。そしてここカンパラ・インターナショナルホテルはそういった秘密警察による暗躍の舞台であり、事実そこらへんに秘密警察官はウジャウジャといるのである。

そんな中でスパイ容疑者である(無実のね)吾輩に、ホテルの者と連絡を取らせるのは彼にとっては命取りになりかねない。誰かが見ていて当局に密告されるかも知れない!

彼は顔面蒼白で脂汗を流しながら苦しみ悩み続けた。

「いやいやいや、もういいよ。気にしないで、気にしないで!ムリ言ってごめんね」

と吾輩が言いかけたとき、「わかった。1分で戻ってきてくれ。絶対走るなよ」と彼は呻くように言った。

そんな彼の葛藤を知ってか知らずか、無邪気な好青年でありスパイ容疑者である吾輩はホテルの受付に急いだのである。おっと、走っちゃいけねえんだった。

吾輩は無邪気なノンキ牧師である。走ったことはまだない。

ホテルマン(以下、ホテ)「いらっしゃいませ」

吾「ちょちょ、ちょっと聞くけど今日日本人は誰か泊まってますか?」

ホテ「お待ちください。(間)あ、お一人いらっしゃいますね」

吾「ちょっと待ってね、手紙書くから。(間) よし、このメモをその日本人に渡してくれますか?」

ホテ「かしこまりました」

てなわけで、㊙︎ポリのもとに戻ってくると彼は何度も言うが顔面蒼白で、いや、ホントにクロいけどマッサオで、脂汗まみれで、恐怖で震えながら周りをキョロキョロ見ているのである。

「あのお、あんまりキョロキョロしない方がいいと思うよ」などと言っている場合じゃない。

本気で彼は怯えていたのである。申し訳ないことをした、とつくづく思う。

しかし、このやさしくて親切なウガンダ秘密警察官の勇気ある英雄的な行為のおかげでその夜吾輩は二週間ぶりかな、中央警察署の留置場を脱獄、じゃなくて、晴れて出ることができたのである。

それから本当にまもなくこの戦争はウガンダの敗北に終わり、カンパラの街も悲惨な状況に陥ったらしい。多くの人々が命をなくした。あの、親切でやさしかった㊙︎ポリが無事であったことを心から願う。

ああ、あぶねえとこだった。いや、実はあぶねえことはまだまだ続くのである。ナメてはいけない。読者諸賢も、このくだらない話にそろそろ飽きてきたと思うがあとちょっとだけおつきあい願いたい。

吾輩はシャバに戻った牧師である。でも安心したわけではない。

中村 透(牧師バー店主/主任牧師@酒場で教会)


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2020/05/13我輩は酒場牧師である

Posted by NCM2 CHOIR