我輩は穴に入り牧師である。反省はまだない。

2020/02/20我輩は酒場牧師である

我輩は酒場牧師である。前科はまだない。さて、ザイールのジャングルでマラリヤにやられて体力を著しく落としてしまった我輩は、休息を求めてケニヤの首都ナイロビを目指したのである。早く休みたいのでここは最短距離で行きたいものである。それには隣国ウガンダを通り抜けるのが一番早い。ところが問題があった。ウガンダに。

早い話がウガンダは戦争中だったのである。ウガンダの南に隣接する社会主義国タンザニアが相手である。戦争の原因が何であったかは我輩の知ったことではない。我輩の進路の邪魔さえしなければ許してやるのである。

ザイールで時たま出会う白人旅行者たちは口を揃えてウガンダは危険だから避けて、回り道をして進むのだと言う。腰抜けどもめが!戦争が怖くて貧乏旅行ができるか!そもそもお前らが昔さんざんアフリカで悪いことをして来たから怖いんだろう!おいらは日本男児だ!アフリカとは仲良しだい!戦争なんかへっちゃらだい!

てなわけで長い間世話になったザイールに別れを告げるべくウガンダとの国境に着いた。たいていの場合出国にはあまり問題がない。難しいのは入国の方である。その通りザイール出国は何の問題もなかった。数分歩くと今度はウガンダの国境となる。

緊張しながら建物に入ると、入国審査官は非常に親切で気さくな人だった。和やかに30分ほど世間話をして、さあパスポートにスタンプを押そうというとき彼は言った。「ところでビザはどこにあるの?」

ああ、親切な人でもやっぱり訊くのね(当たり前である)

ウガンダの人々の信じがたいほどの優しさと善意

はっきり言おう。我輩はウガンダのビザなど持っていなかったのである。通常目的の国の隣り、というかすぐ手前の国でビザを買うのである。これが一番簡単で安い。しかし今回は手前の国ザイールでは我輩はジャングルばかり通って来て、大使館のある首都の街には行っていない。

首都は巨大なザイールのほぼ対角線上にある。行くだけで一月はかかるだろう。病弱な(この時はね)我輩には無理な相談である。まあ何とかなるだろう、という極めて楽観的な態度で国境へと臨んだのである。

「ビザはどこ?」

それに対して我輩は悠揚迫らぬ鷹揚とした堂々たる態度でこう答えた。

「ビザ?日本人はウガンダ入国にビザは必要ないと聞いていますが」

審査官「ああ、なるほどね。そうだろうね。はい、ポン(スタンプ押す音)。1ヶ月の滞在許可あげるから首都のカンパラに着いたらイミグレの本部に行って登録してね」

何という親切な入国審査官さまだろう!そして我輩の言葉(別の言葉で表現すれば、ウソ。でも我輩はその当時は牧師どころかクリスチャンでさえない、ただの善良な無神論者の一好青年であったに過ぎないのであるから、ウソついたことをせめたりしないでほしい)を信じて調べもせずにハンコを押しちゃうとは何といういい加減さであろう。

でもここはアフリカの人の善意とやさしさをこそ褒め称えるべきであって、いい加減さをあげつらうのは人として許されることではあるまい。

というわけで無事入国成功!別れ際に親切な入国審査官さまはこう仰った。

「ウガンダのお金に両替が必要でしょ?あのね、銀行で両替なんかしたら損しちゃうからブラックマーケット(闇両替屋)で替えた方がいいよ。この先4キロの○○っていう街にいくらであるからさ」

ああ!アフリカよ!この瞬間我輩はアフリカに恋をした。他のどこの地で入国審査官が闇両替を勧め、しかも場所まで教えてくれるというようなことがあろうか!

正直に言おう。彼が両替のことを話題にしたとき我輩は心の片隅でこう思ったのだ。「あ、オレが両替してやるよとか言って高いレートをふっかけるつもりだな」
穴があったら入りたい、とはこのことであろう。我輩は親切な人の善意を心の中で踏みにじってしまったのだ。

アフリカの人の善意はまだ続く。その○○という街への4kmほどの道を歩き始めると後ろから来たタクシーが止まって我輩に声をかけて来た。

「乗るかい?」

ほーら来たよ、ぼったくりタクシーが!

「いや、いいよ。金ないし」

運ちゃん「金はいいよ。○○へ行くんだろう?どうせ帰り道だから金なんかいらないよ」

ああ!アフリカよ!この瞬間我輩はアフリカを愛してしまった。

穴があったら入りたい、とはこのことであろう。そのすばらしいアフリカの、特にウガンダの人々の信じがたいほどの優しさと善意を我輩はまたしても心の中で踏みにじってしまったのだ。

ああ!我輩のばか!お前なんか穴に入ってしまえ!反省しろ!

我輩は穴に入り牧師である。反省はまだない。

中村 透(牧師バー店主/主任牧師@酒場で教会)


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2020/02/20我輩は酒場牧師である

Posted by NCM2 CHOIR