臭い飯を喰ったことは二度ある|【第三話】酒場牧師のケニヤ投獄記

第三話 ―― アフリカ投獄記 その二

臭い飯を
喰ったことは
二度ある

第三話 / モンバサ象牙投獄

我輩は酒場牧師である。前科はまだない。本当である。

前科はまだないがローヤにぶちこまれて臭い飯を喰ったことは二度ある。あ〜、やっぱりね、などと思ったヤツは信仰が足りない。猛省を促す。

ぶちこまれたことは確かに二度あるがどちらも先方のカン違いであって我輩にはなんの罪もない。(いや、罪はあるけどよ、それは聖書的な意味でね)

しかもそれが起こったのは日本でもアメリカでもない。二度ともアフリカである。我輩はアフリカの官憲に対して非を責め立てるつもりは全くないが読者諸兄の興味を惹くかもと思いここに詳細を記すことにしよう。

ケニヤの港町モンバサで投獄される

一度目については次回にでも話そう。今回は二度目のことからいきませう。

二度目はケニヤの港町モンバサというところである。ぶちこまれた理由は、我輩が隣国タンザニアに行っていた友人がお土産にくれた象牙の腕輪と首飾りをつけて街を歩いていたことである。

ケニヤという国は動物保護に熱心なので、象牙や剥製などの動物製品の売買は禁じられている。ところがそれでも手に入れようとする某国や●国や○国の金持ちがいる。そいつらが雇った密猟者による密猟が後を絶たない。

当時はそれほどでもなかったが今は密猟者たちもライフルや機関銃などで武装しているらしいから真剣で本格的である。

で、我輩もケニヤでは象牙などは少なくともおおっぴらには売られていないことは知っていたが、身につけているだけで咎められるとは思ってもみなかった。まして、象牙の売買が全く自由なタンザニアからのお土産である。

まったく気にしないでモンバサの街を歩き回っていたわけである。そして前日にはある証明書が必要でモンバサの警察署を訪ねておまわりさんとも色々お話しして無事証明書をもらったし、もちろん身につけている象牙に関しては何のお咎めもなかったのみならず、そのお巡りさんも「へえ、いい象牙だね」と褒めてくれたりもしたのである。

ところが!ところがである、翌日お昼頃街を歩いていると二人の警官に呼び止められ、そのまま昨日訪ねてきた警察署にしょっぴかれてしまったのである。問われたのはただ一つ、「その象牙どうしたの?」これだけである。

我輩「友達がタンザニアで買ってきてくれたお土産だよ」警官「ふ〜ん」。これでおしまい。そのままローヤにぶちこまれてしまったのである。

荷物検査などはほとんどなく実に簡単な手続きであった。簡単でよかったよ。象牙に関しては何の恥じるところもないと思っていたが、それとは別に見つからない方がいい物も持っていたからである。(あ、この時は我輩はまだ牧師にもなっていなかったし、クリスチャンでさえない、ただの無神論者の好青年だったのである。牧師のくせに!とか責めないでね。)

しかし拍子抜けするほど簡単な手続きのおかげで、見つからない方がいい物も見つかることなく、無事に(?)ローヤに直行したのである。

中の人たちはとても親切で居心地は悪くなかった。ちゃんと飯も食わせてくれたし、別に臭くもなかった。

ごく普通のおかず一皿に、ご飯かチャパティを選べるシステムで、我輩がご飯を選ぶと周囲のアフリカ人たちがなぜか「おお」とどよめいた。

なぜかしら?見ると他の人たちは全員がチャパティを食ってた。ご飯まずくて有名だったのだろうか。いや、まずくなかったけど。

次の朝呼び出されて連れて行かれたところは裁判所であった。待っている間他の囚人というかアフリカ人たちが、「今日は白人の裁判長に当たるといいなあ。インド人の裁判官ヤローは意地悪で生意気だしなあ。せめてケニヤ人のあいつならなあ」などという貴重な情報を教えてくれる。裁判長は3人いるらしい。てか、こいつら常連かよ!?

白人様の裁判長様のお裁き

で、我輩は平素の品行方正、品性極上な点が考慮されてめでたく白人様の裁判長様のお裁きを受けることになった。

白人様「象牙を持っていたんだね?」

我輩「へえ、左様でごぜえますだ(這いつくばる)」

白人様「その象牙はどうしたの?ケニヤでは買えないはずだけど」

我輩「へえへえ、友人がタンザニアに遊びに行ってそこで買ってきてくれたものをお土産としていただいたものでして、へえ」

白人様「ふ〜ん。で、領収証はあるの?」

我輩「いえ、お土産なので領収証はごぜえませんでごぜえます(地に伏す)」

白人様「なるほどねえ。私も自宅には象牙製品や剥製なんかいっぱいあるけど、領収証なんかないもんなあ。わかった。じゃあ、悪いけど決まりだから象牙は没収で、あと罰金払ってね。はい、お疲れさんっしたあ。帰っていいよ」

てなわけで、白人様の寛大な大岡裁きで無事釈放。

でもさあ、我輩がお仕えしている神さまの方が、もっともっと寛大でやさしくさばいてくださるんだろうなあ。

我輩は酒場牧師である。前科はまだない(ギリギリ)

店主について ―― 中村 透

牧師バー
 

早稲田大学文学部文芸科卒。大型トラックの運転手で金を貯め、香港・タイ・インドを経てヒッチハイクで西へ。アフリカを二年半放浪し、ザイールのジャングルでマラリヤ、ウガンダでスパイと間違われ投獄。ロスでクリスチャンとなり牧師に。2014年から新宿ゴールデン街で牧師バー「酒場で教会!」を開始。2026年5月から東京の四谷・荒木町で「酒場で教会!牧師バー!」主宰。

実物の我輩に会いに「牧師バー」に来るもよし、NCM2の賛美の調べを聴くもよし。