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癌治療、最後の一滴

長かったのか短かったのか、私の癌治療が先日終わりました。再発がない限り、この治療室を訪ねる必要がなくなります。肺に腫瘍があり、癌の可能性があると言われたのが2017年の2月、生体検査で肺がんが確定され、リンパ節に転移していると確定されたのが6月でした。

目次 | 癌治療、最後の一滴

私の癌治療が先日終わりました。| 癌治療、最後の一滴

長かったのか短かったのか、私の癌治療が先日終わりました。再発がない限り、この治療室を訪ねる必要がなくなります。肺に腫瘍があり、癌の可能性があると言われたのが2017年の2月、生体検査で肺がんが確定され、リンパ節に転移していると確定されたのが6月でした。

癌治療で苦しんで亡くなった人を知っていましたし、治療しないことを決めて3年間のびのびと人生を楽しみ、亡くなった人もいました。それで、治療をするかどうか考えさせられました。私たちは、いずれ死ぬのです。

(身近に、癌の研究をしていた方がいたので)結局、癌とは何か、どういう治療方法があるのかということを勉強させられました。教えられたことは、今では癌は、かならずしも死ななければならない病気ではないということです。今は、新しい治療方法が日進月歩で考案され、ワクチンのように、予防方法さえ研究されているのです。

簡単に、これまでの経過をお話ししますと、まず、City of Hope に行くように言われて、先生に会いました。その先生に、楽しそうに、死刑を宣告する裁判官のように、「もし、何もしなかったら、余命2年だ」と告げられました。

患者の気持ちなど少しも思いやらない態度です。逆にいえば、そういうお前たちを私たちが助けてやるんだ、ということなのでしょうか。その無神経さに腹がたち、“生きてくれてやろうじゃないか”と思わされたのでした。

UCLAでの検査

その癌の研究をしていた友人に勧められて、ヒューストンにある(癌の治療では)世界一と言われるMD Anderson という病院を訪ねました。

そこは癌患者には至れり尽くせりの施設でしたが、遠いのでそこで長期の治療をする気にはなれず、“UCLA でも同じような治療ができる”と聞いたので、娘の友人の父でUCLAの教授をしている人にコンタクトしたところ、“自分が癌の専門医だ”というのでした。翌日彼に会い、検査を全部し直して、癌治療を始めました。

UCLAでの検査では、ターゲット療法(*1)の標的になる異常細胞(EGFRなど)が検知されず、免疫療法(*2)のための免疫阻害剤(PD-1/PD-L1など)も検知されなかったので、一般的な化学療法(*3)をやるしか選択肢はありませんでした。いわゆる、キモセラピーです。以前から比べると画期的に楽になったと言われるけど、つらい治療法です。

点滴した後3日ごろから吐き気、下痢・便秘、食欲低下、全身倦怠感、気力減退、フラフラ感などで苦しみました。医者からは、とにかく衰弱しないように、極力食べて、体重を減らさないように注意されました。3週間が1ラウンドで、1週間半苦しみ、残りの1週間半でリカバリーするという計画です。だんだん苦しさが増してきて、4週サイクルにしてくれないかと思うようになります。(本当に、私のような年寄りは、その方がいいかも?)

2種類の薬を使って、4ラウンドして、CT+PETスキャン(*4)をして、癌の縮小ぐあいを測り、順調なら、薬を一種類にします。それをメインテナンス(維持管理する)といい、それを2ラウンドしたところで、治療をUCLAからUSCの癌センターに変更しました。

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<備考>

(*1)ターゲット療法(標的療法)とは、癌細胞(異変した細胞)のタイプを特定できれば、その特定の細胞を狙って治療することが出来るということです。例えば、EGFRは喫煙者に多いタイプで、それに効く薬が使えます。通常、錠剤で副作用が少ないのです。まったくないのではありません。痒みで皮膚がぼろぼろになるということがあるそうです。

(*2)免疫療法とは、癌を殺す“免疫”が癌に騙されて、癌を攻撃しないという現象があります。そういう阻害原因を取り除くということから始まりました。最近、ノーベル賞の受賞でさかんに話されているPL-1などそのひとつですが、そういう免疫阻害剤を取り除くというだけではなく、免疫力を高めるという効果を期待することができるものです。

(*3)一般の化学療法は、癌の新陳代謝が異常に旺盛なのを利用して、栄養素を装った“毒”を注入して、癌細胞に吸収させて抹殺する方法です。勿論、良い正常な細胞もその毒を吸収するけど、再生能力があるので、大部分が生き残り、癌細胞(異常細胞)は再生能力がないので死滅するという論理です。ですから、化学療法で最も重要なことは、体力を失わないこと、体重を減らさないことです。とにかく食べて消化させることです。

(*4)CT スキャンは、いわゆる 360度のX-Rayと考えていいと思います。とても精度がよくなっていて、身体内のあらゆる形状を画像で見ることができます。PETスキャンは、断食した後に、糖に放射線物質を混ぜたものを身体に(血管から)注入して、細胞にとり込ませて、細胞の新陳代謝の程度をはかるものです。癌細胞のように新陳代謝が異常にはげしいものは、光り輝くのです。その光の強さで癌活動をはかるのです。

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治療をUSCに変更した理由 | 癌治療、最後の一滴(その2)

USCに変更した理由は、治療していた家の近くのUCLAの治療センターの先生が治療方針を明確に提示できなかったためでした。

それに、私がUCLAで気にいらなかったことは、MD Andersonの先生からターゲット療法(標的療法)に必要なEGFRが微量検知されたという報告があるのに、UCLAでは、自分のところでは、検知されなかったと一蹴していることでした。それで、USCの先生にコンタクトして、MD Andersonでは、EGFRが検知されたという報告があるのに、UCLAでは、検知されなかったというけど、“どちらが本当なのか?”と訊きました。このUSCの先生は、即座に、MD Anderson が正しいと言ったのでした。

どうしてかと訊いたら、生体検査は、場所と量で違う結果が出るというのです。
だから、微量でもEGFRが感知されたら、EGFRをもとにした治療をすることができるというのでした。

ただし、今までの化学療法は、とてもよく効いているので、このまましばらく続けるのがよいだろうと話してくれました。

この先生は、ズバズバ言う人ですが、あのCity of No Hope の先生のような不快さはありませんでした。結局、患者のことを思って言っているのか否かだろうと思わされました。それにやることが早い。吐き気の薬も(便秘をもよおさないものに)さっと変えました。

化学療法を2種類の薬から1種類に

化学療法を2種類の薬から1種類にしてから3ラウンドした時、“化学療法だけでは、癌をなくすことはできない”とある放射線の先生から聞いたので、その話をしたら、先生は、CT+PET Scanの画像をしばらく見つめてから、食道のまわりに放射線治療(*1)をするのは、おかしな話ではない(not a crazy idea)と言いました。そして、すぐ放射線の先生に会ったらいい、自分も彼がどういうか興味があるといって3日後に会うアポイントメントをとってくれました。

そして、若い(32歳)の中国系の放射線科の先生に会いました。彼は、一目見てすぐに優秀な先生だとわかりました。(ちなみに、彼は、英語、中国語、日本語ができます。)彼はすでに私の病状のデータを検討していて、どうしたらいいかという考えをまとめていました。

“ステージ4だと保険の問題があるので、ステージ3ということにして、すぐ、放射線治療を始めましょう”と言いました。そして、そのためには、すぐ、シミュレーションをするというのです。要は、いろんな種類の放射線をどのような角度で癌化した特定の患部に当てるかというプログラムを作るのです。そのためには、身体の位置決めをしなければなりません。放射線の機械の台に乗せられて、マスク(*2)を作ります。マスクで頭を固定すれば、身体の位置はおのずと決まるのです。

放射線療法もコンピューターの進歩で、いろんなレーザーをいろんな形状に放射することが出来るようになり、必要なところだけに放射することが可能になりました。これで、放射によるダメージがずーっと少なくなるのです。この放射線療法は土日のぞいて毎日、計31日(一日約15分)やりました。

待合室でコーヒーを飲みながら待っていると名前が呼ばれ、着替えたら、放射線室へ、出てくると次の人が待っています。この人たちは、みんな私の“仲間”です。癌戦争を戦っている“仲間”なのです。

<備考>

(*1)放射線療法は、最近とみに進歩してきて、Cyber Knife という極めて正確で手術的な治療方法もあります。これは、切り取るのが難しい局部的な部位を切り取るような時に使います。私のサイズの腫瘍は、3日もあれば消滅させることができるそうです。でも、癌がリンパ節に転移しているので、腫瘍を取り除いてもダメです。私の癌は、その腫瘍から食道に沿って並んでいるリンパ節に転移しているので、それぞれの患部を個別的に放射するのです。例えば、私の癌の発祥地である腫瘍(18ミリx9ミリ)は、私の胸に埋め込まれているICD(ペースメーカと除細動器がついているもの)の真後ろにあるのです。ですから、その器具を避けながら、腫瘍に放射しなければなりません。放射線は360度から放射されるのですが、特定のところに集中して放射するようにプログラムされます。コンピューターで見せてもらったのですが、無数の場所に複数の放射線があてられるのです。実際、この技術には、驚嘆させられるものです。そして、その技術は(さらに)日進月歩なのです。

(*2)マスクの写真です。プラスチックの網のような板を温めて、顔の上から押しつけると、(そのプラスチックが伸びて)その人の顔の形になります。冷めると固くなり、顔にピッタリはまるマスクになります。あまりきつく留めると苦しいので、“最大限に緩めてください。動かないから”と頼みます。

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放射線療法を始めても、化学療法は続けていた理由 | 癌治療、最後の一滴(その3)

 

放射線療法を始めても、化学療法は続けていました。その理由は、キモをすることによって放射線療法の効果をよりあげることができるからです。

私たちの細胞には再生能力があって、ダメージがあっても、そのダメージを修復する能力があるのだそうです。でも、癌細胞は、もともと異常細胞なので、再生能力がない。だから、放射された細胞で、正常なものの多くは再生され、癌細胞は死んでいくというわけです。(キモは、相乗効果になるのだそうです。)

放射線療法自体は、短時間ですし、身体的にあまり負担がないのですが、その身体的負担は、体内に次第に溜まり、積もってきます。最初は、あまり変化がないようですが、次第に胸の皮膚が日焼けのようになってきます。それは、表面的な変化で、身体の中は、更にもっと焼けているのです。(*1)

それに、癌化したリンパ節が食道に近いので(*2)、食道がどうしても(間接的に)焼かれてしまいます。次第に食事をするのが大変になってきます。痛くて食事ができない(麻酔液を飲みながら食べる)。水も飲めなくなって、病院で(点滴で)水分を補給しなくてはならなくなります。

放射線療法が終わったのが、2018年の3月8日で、3か月後にPETスキャンをしたら、放射線療法後の炎症が残っているので、明確に結果を判断することができないと言われ、次のスキャンで“REMISSION(寛解)”と宣言されました。

REMISSION(寛解)とは、病気の勢いが弱まったことを指す言葉で、癌は再発することがあるので、治癒とは言わず寛解というのです。Partial Remissionまたは、Complete Remission という言葉がつかわれます。幸い私は、Complete Remission でした。癌活動が(まったく)検知されなくなったということです。

放射線の先生から、“もし再発したら、ターゲット療法をするようになるけど、出来れば「免疫療法」をした方がいい”と言われました。(ちなみに、肺癌患者の二人にひとりは再発するのだそうです)でも、保険の問題がありました。私の癌はステージ3Bか4なのですが、厳密に言うとステージ4なのです。FDAが認可している(*3)のは、今のところステージ3までなのです。

丁度その頃、テレビのニュースで肺癌には、免疫療法が効く(末期癌にも効く)という報道があり、妻がインターネットで調べてみたら、その報道のもとになっていたのが、私の先生の臨床報告だったのです。それで、私は、その報告書のコピーをもって、先生に談判したのです。そんなに有効だと知っていながら、ステージが3か4かで免疫療法をしてくれないのかと談判して、やってもらうようになりました。そして、一年間、隔週の免疫療法をやり終えたのでした。

これで、再発しないという保証は何もありません。免疫を強めたというだけです。再発したら、ターゲット療法が待っています。でも、これで、私は一般的な肺癌の癌治療の全工程のメニューを完了したことになります。

もう、USCの癌治療センターの椅子に座り、点滴をしながら、サンドイッチを頬張り、ジンジャエールを飲む(*4)ことがないというのは少し寂しいという思いもしない訳ではないのですが、看護婦の皆さんと、2人の担当医師には感謝の思いでいっぱいです。先生とは、検査のために3か月か6か月ごとに会うのですが、化学療法室の看護婦のみなさんには会う必要がなくなります。これを書いていて、自分はなんて幸せだったのだろうかと思うと同時に、これまで導いてくれた主なる神に心からの感謝をささげるものです。

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<備考>

(*1)複数の放射線が正確に局部(腫瘍、癌化した複数のリンパ節)に当てられます。そして、そのターゲットに放射線を交差させて焼くのです。ですから、表面にあたる放射線の量は少なく、体内で交差するところの放射線の量が増強されるのです。

(*2)それでもダメージはあります。放射線療法終了後の写真(皮膚のダメージはじわじわと出てきます)です。

FDAの認可がどうして重要か

(*3)FDAの認可がどうして重要かといいますと、FDAの認可がなければ、保険が降りないのです。金持ちなら自分のお金で何でもできるでしょうが、保険がなければ治療は受けられません。なぜ、ステージ3ならOKで、4ならダメかといいますと、医学的検証が(臨床検証)が終わってないからです。FDAの認可には時間とお金がかかるのです。私の場合、良き医師にめぐまれて、ステージ3Bとして、取り扱っていただいたのでした。(感謝!)

癌が転移しても、発生した部位(セクション)内にとどまっている場合は、3B。その部位外に転移している場合は、4になります。私の場合、食道にそって繋がっているリンパ節が肺から首に方に(少し上に)出ているので、厳密に言うと4ということになるのです。それで、3Bか4という表現になります。
USCとUCLAの違いは、UCLAは杓子定規だと思います。UCLAだったら、放射線療法も免疫療法もさせてもらえなかったと思います。USC

では、融通を聞かせてもらえた。それは、どんなに感謝してもしきれないことだと思います。

(*4)そして、USCはランチが出ます。点滴は、キモセラピーでは2時間くらいかかります。その間に、ランチを無料で提供してくれます。前は、ローストビーフサンドイッチがあったので、いつもそれをオーダしていました。それがメニューから消えたので、ターキーサンドイッチにしました。まだ昼前だと、朝ご飯的にエッグサンドイッチにします。

飲み物は、ジンジャエールだけ、コークは出ません。オレンジジュースもアップルジュースもあります。ヨーグルトもメロンやパインナップルなどフルーツミックスもあります。たいしたものじゃないと言えばそうですが、無料です。看護婦たちは、昼時、こんなものを食べさせてもらえないんじゃないかなと思うと、何か申し訳ないみたい。でも、次第になれてくると当たり前になってきます。(写真をとればよかったな)(10日に行くので、その時写真を撮ってきます)

ロバート・イー

PS.今日は、先生に会う日で、昼食の写真を撮ってきましたが、食事をとりだすと戻せないというので、最低限のメニューにしました。ターキーサンドイッチ、コップに入ったフルーツの盛り合わせ、ヨーグルト、ジンジャエール、チップスだけにしました。持っていけと言われて、持ってきました。😇


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